【完全ガイド】クリッパーのスペアタイヤ交換｜場所・ない時の対処法も

日産クリッパーで突然のパンクに見舞われた際、「スペアタイヤはどこにあるんだろう？」と焦ってしまった経験はありませんか。いざという時のために交換方法は知っていても、肝心のスペアタイヤの位置や正しい外し方が分からないと、路上で途方に暮れてしまいます。また、車種やグレードによってはスペアタイヤがない場合もあり、その対処法を知らない方も多いのではないでしょうか。この記事では、クリッパーのスペアタイヤが収納されている場所から、必要な工具、そして具体的な交換手順まで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。

クリッパーのスペアタイヤの場所と基本情報

スペアタイヤの搭載位置はどこ？

日産クリッパー（NV100クリッパー/NT100クリッパートラック）のスペアタイヤは、多くのモデルでラゲッジスペース（荷室）の床下、または車両後部の床下に格納されています。これは、商用車としての積載スペースを最大限に確保するための合理的な設計です。具体的には、NV100クリッパー（バンタイプ）であれば荷室のフロアボードやカーペットをめくると、スペアタイヤが格納されているスペースが現れるのが一般的です。

クリッパーバンや上級グレードのクリッパーリオなど、車種のバリエーションによって若干の違いはありますが、後部座席の後ろ、リアバンパー寄りの床下を探すと見つけやすいでしょう。タイヤは車体にボルトや蝶ネジ式のクランプで固定されているため、取り出す際にはこれを手で緩める必要があります。

スペアタイヤは「応急用」です

クリッパーに搭載されているスペアタイヤは、多くの場合「テンパータイヤ」と呼ばれる応急用タイヤです。これは通常のタイヤよりも幅が狭く、軽量に作られています。あくまで一時的に使用するためのものであり、速度（通常は時速80km以下）や走行距離（約100km程度）に制限があります。交換後は、速やかに最寄りの整備工場やタイヤ販売店で標準タイヤへの交換を行ってください。

グレードで異なるスペアタイヤの搭載場所

前述の通り、スペアタイヤの基本的な搭載場所は荷室床下などが一般的ですが、クリッパーのグレードや年式、駆動方式（2WD/4WD）によってはスペアタイヤが標準装備されていない場合があります。特に、燃費性能を重視した上級グレードや特定のパッケージオプションを選択した車両では、スペアタイヤの代わりに「パンク修理キット」が搭載されていることが多いです。

これは、車体の軽量化による燃費性能の向上や、より広い荷室スペースの確保を目的としています。ご自身のクリッパーにスペアタイヤが搭載されているか不明な場合は、車検証入れに保管されている車両の取扱説明書を確認するのが最も確実な方法です。

装備タイプ	特徴	メリット	デメリット
スペアタイヤ	物理的なタイヤを搭載。応急用が主流。	タイヤの損傷が激しくても交換可能。安心感が高い。	重量があり燃費に影響。スペースを取る。交換作業が必要。
パンク修理キット	修理液とコンプレッサーを搭載。	軽量で省スペース。燃費向上に貢献。作業が比較的容易。	大きな裂け傷や側面損傷には無力。使用後タイヤの再利用が困難。

なぜスペアタイヤがない車種があるのか

近年、クリッパーに限らず国内で販売される乗用車の多くがスペアタイヤを標準搭載しなくなっています。これには、技術の進歩や社会環境の変化など、複数の理由が背景にあります。

最大の理由は、車体の軽量化による燃費向上です。スペアタイヤとジャッキなどの工具一式を合わせると15kg～20kg程度の重量になり、これらをなくすことで厳しい燃費基準をクリアしやすくなります。また、スペアタイヤを格納していたスペースを、収納スペースやハイブリッドシステムのバッテリー設置場所として有効活用できるメリットもあります。

さらに、JAF（日本自動車連盟）の調査によると、パンクによる出動件数は年々減少し、ロードサービスの主要な出動理由ではなくなってきています。これは、道路環境の整備やタイヤ自体の性能向上によるものです。（出典：JAF「ロードサービス出動理由」）

昔はパンクが当たり前でしたが、今は道路もタイヤも性能が向上しました。万が一の際はJAFや保険のロードサービスを呼ぶのが一般的になったことも、スペアタイヤが搭載されなくなった大きな理由の一つですね。

このように、「燃費性能の追求」「スペース効率の向上」「パンク頻度の低下」「ロードサービスの普及」といった複数の要因が重なり、スペアタイヤを搭載しない選択が主流となりつつあるのです。

パンク修理キットが代わりにあることも

スペアタイヤが搭載されていないクリッパーには、代わりに「タイヤパンク応急修理キット」が標準装備されています。これは、液状のシーラント（修理剤）と、シガーソケット電源で動くエアコンプレッサーがセットになったもので、タイヤを取り外すことなく応急処置ができる便利なアイテムです。

使い方は比較的簡単で、以下の手順で行います。

1. タイヤに刺さっている釘などは抜かずに、修理剤のボトルをタイヤのバルブに接続する。
2. ボトルにコンプレッサーのホースを接続し、車のシガーソケットに電源プラグを差し込む。
3. エンジンをかけ、コンプレッサーのスイッチを入れて修理剤と空気を同時に注入する。
4. タイヤの空気圧が規定値まで上がったら、コンプレッサーを停止し、すぐに低速で走行して修理剤をタイヤ内部に均一に行き渡らせる。

ジャッキアップなどの力仕事が不要なため、誰でも手軽に応急処置を行えるのが最大のメリットになります。

パンク修理キットの限界と注意点

パンク修理キットは非常に便利ですが、万能ではありません。タイヤの接地面（トレッド面）に開いた直径6mm程度の釘穴パンクにしか対応できず、タイヤ側面の亀裂（サイドウォール）や、大きな裂け傷、バースト（破裂）には全く効果がありません。

また、一度修理キットを使用したタイヤは、内部が修理剤で汚損するため、本格的な内面修理ができなくなり、タイヤごと交換になる可能性が非常に高いことも覚えておく必要があります。あくまでも「次の整備工場までたどり着くための最終手段」と認識しておきましょう。

交換に必要な工具は揃っているか確認

スペアタイヤが搭載されているクリッパーには、交換に必要な最低限の工具も一緒に格納されています。これらは「車載工具」と呼ばれ、通常はスペアタイヤの近くや、運転席・助手席の下などにまとめて収納されています。

改めて、基本的な車載工具の内容を確認しておきましょう。

基本的な車載工具一覧

• ジャッキ：車体を持ち上げるための道具。手動式のパンタグラフジャッキが一般的。
• ジャッキハンドル：ジャッキを伸縮させるための棒状のハンドル。
• ホイールナットレンチ：タイヤのホイールナットを緩めたり締めたりするL字型のレンチ。

これらの工具があれば最低限の交換は可能ですが、より安全かつスムーズに作業を行うために、以下のアイテムも車に常備しておくことを強くお勧めします。これらはカー用品店やホームセンターで手軽に購入できます。

• 軍手や作業用グローブ：手の保護と滑り止めのため。タイヤやホイールは非常に汚れています。
• 輪止め：ジャッキアップ中に車が不意に動き出すのを防ぐための重要な安全装備です。
• LEDライトや懐中電灯：夜間やトンネル内など、暗い場所での作業に必須です。
• トルクレンチ：ホイールナットを規定の力で正確に締め付けるための専門工具。安全性を追求するなら備えておきたいアイテムです。

クリッパーのスペアタイヤ交換で困らない手順

安全な場所でのスペアタイヤの外し方

スペアタイヤを交換する前に、まずは搭載されているスペアタイヤを車体から取り出す必要があります。荷室のフロアボードなどを開け、スペアタイヤを確認してください。

スペアタイヤは、中央にある大きな蝶ネジや樹脂製のクランプで車体に固定されています。このクランプを「反時計回り」に回して緩めることで、固定が解除され、スペアタイヤを取り出すことができます。工具は不要で、手で回せる場合がほとんどですが、固着している場合は少し力を込めて回してください。

取り出す際のワンポイントアドバイス

タイヤとホイールは意外と重く、10kg以上あることも珍しくありません。荷室の奥から無理な姿勢で持ち上げると腰を痛める原因になりますので、片膝をつくなど安定した体勢で作業しましょう。また、取り出したスペアタイヤは、後述するジャッキアップ作業の際に、万が一の保険としてジャッキアップポイント付近の車体の下に置いておくと、ジャッキが外れた際の被害を最小限に抑えることができ、安全性が格段に高まります。

スペアタイヤの交換手順を5ステップで解説

ここからは、実際にパンクしたタイヤをスペアタイヤに交換する手順を5つのステップに分けて、より詳細に解説します。手順をしっかり守ることが、安全な作業の基本です。

ステップ1：安全の確保と準備

まず、交通の妨げにならない、硬く締まった平坦な場所に車を停車させます。傾斜地や砂利道、柔らかい路肩での作業はジャッキが不安定になり非常に危険なため、絶対に避けてください。周囲の安全を確認したら、パーキングブレーキを確実にかけ、シフトレバーを「P（パーキング）」に入れ、エンジンを停止させます。

次に、ハザードランプを点灯させ、後続車に注意を促します。特に高速道路や自動車専用道では、停止表示器材（三角表示板）の設置が法律で義務付けられており、怠ると罰則の対象となります。（出典：警察庁）

最後に、交換するタイヤの対角線上にあるタイヤに輪止めをします。例えば、左前のタイヤを交換する場合は、右後のタイヤの後ろ側に輪止めを設置することで、車体が前後に動くのを効果的に防げます。

ステップ2：ホイールナットを緩める

車体をジャッキで持ち上げる前に、ホイールナットレンチを使って、パンクしたタイヤのナットを緩めます。レンチをナットにしっかりと奥まで差し込み、「反時計回り」に約1回転ほど緩めてください。この時点では完全に外さず、あくまで「緩める」だけです。

非常に固く締まっていることが多いですが、レンチの端に両手をかけて、体重を乗せるように力を加えると緩めやすくなります。地面にタイヤが接地している状態でないと、レンチに力をかけた際にタイヤが空転してしまい、ナットを緩めることができないため、この順番は必ず守ってください。

ステップ3：ジャッキアップ

車両の側面下部にある「ジャッキアップポイント」にジャッキの先端を正しく当てます。ジャッキアップポイントは、ボディの固いフレーム部分にあり、多くは金属の板が2枚合わさった部分にある切り欠きや凹みで示されています。取扱説明書で正確な位置を必ず確認してください。

ジャッキを手で回してポイントに軽く接触させ、位置がずれていないか確認してから、ジャッキハンドルを使ってゆっくりと車体を持ち上げます。タイヤが地面から2〜5cmほど浮き上がるまでが目安です。

ジャッキアップ時の最重要注意事項

ジャッキで持ち上げている最中や、上がった状態の車体の下には、手や足を含め、体の一部を絶対に入れないでください。予期せぬ衝撃や地面の沈下でジャッキが外れた場合、重大な人身事故につながる恐れがあり、極めて危険です。

ステップ4：タイヤの交換

車体が安定して持ち上がっていることを確認したら、緩めておいたナットを全て手で回して取り外します。ナットをなくさないように、ポケットや車のフロアマットの上などにまとめて置いておきましょう。全てのナットを外したら、パンクしたタイヤを両手でしっかりと支え、手前にまっすぐ引き抜きます。

次に、ハブ（車体側の円盤部分）の取付面やボルト周辺に付着した泥やサビがあれば、布などで軽く拭き取ります。汚れが残っているとホイールが密着せず、走行中に緩む原因になります。清掃後、スペアタイヤを持ち上げ、ハブボルトにホイールの穴を合わせて慎重に取り付けます。

最後に、取り外したナットを手で締められるところまで仮締めしてください。この際、ナットのテーパー（円錐状）になっている側をホイール側に向けて取り付けます。

ステップ5：ジャッキダウンと本締め

全てのナットを手で仮締めしたら、ジャッキハンドルを逆方向に回してゆっくりとジャッキを下げ、タイヤを地面に接地させます。完全に車体の重みがタイヤにかかった状態で、ホイールナットレンチを使い本締めを行います。

締め付けは、対角線上の順番（星を描くような順番）で均等に行います。例えば、ナットが4つなら「上→下→右→左」、5つなら「上→左下→右上→左上→右下」という順番です。これを2〜3周繰り返して、全てのナットを均等に強く締め付けます。これにより、ホイールが偏りなく均等に密着します。

締め付けトルクについて

本来、ホイールナットは「トルクレンチ」を使い、規定の力（締め付けトルク）で締め付ける必要があります。軽自動車や小型商用車の場合、一般的に85～105N・m（ニュートンメートル）の範囲で指定されています。車載工具で力いっぱい締めれば応急的には問題ありませんが、交換後はなるべく早くガソリンスタンドや整備工場で点検してもらい、適切なトルクで増し締めしてもらうことを強く推奨します。

ジャッキアップポイントを間違えないで

タイヤ交換作業における成否と安全を分ける最も重要なポイントが、ジャッキを当てる位置を絶対に間違えないことです。この「ジャッキアップポイント」は、車重を支えられるよう、車両のフレームが特別に補強されている部分に設定されています。

多くの車では、前輪の後ろ、後輪の前に2つの切り欠きがある固い金属のフランジ（つば）部分が指定されています。このポイント以外、例えばドアの下の薄い鉄板部分（サイドシル）や、フロア（床）にジャッキをかけてしまうと、ボディが簡単に凹んだり、変形したりします。それだけでなく、ジャッキが安定せずに滑ってしまい、車体が落下する重大な事故につながる危険性があります。

取扱説明書の確認が絶対！

ジャッキアップポイントの正確な位置は、イラスト付きで車両の取扱説明書に必ず記載されています。自己判断せず、作業前には必ず取扱説明書を開いて、正しい位置を確認する習慣をつけましょう。安全は何よりも優先されるべきです。

作業に自信がない場合の対処法

ここまで交換手順を詳細に解説しましたが、少しでも作業に不安を感じる場合や、「夜間で視界が悪い」「交通量が多くて危険」「地面が不安定」といった状況では、決して無理に自分で作業しないでください。

このような場合は、プロのロードサービスに依頼するのが最も安全で確実な方法です。代表的なサービスには以下のようなものがあります。

サービス名	特徴	連絡先/依頼方法
JAFロードサービス	会員であればほとんどの作業が無料。非会員でも有料で利用可能。全国を網羅する安心のネットワーク。	全国共通ダイヤル「#8139」またはJAF公式サイトから依頼。
自動車保険付帯サービス	加入している自動車保険のオプションとして付帯。保険会社提携の業者が駆けつける。	保険証券やアプリに記載の事故受付・ロードサービス窓口へ連絡。

多くの自動車保険では、ロードサービスを利用しても翌年の保険等級に影響はありません。せっかく保険料を支払っているのですから、いざという時はためらわずに活用しましょう。専門のスタッフが駆けつけて、迅速かつ安全にタイヤ交換やレッカー移動を行ってくれます。

不要なスペアタイヤは売れる？買取相場

もし、社外品のホイールに交換した、あるいはパンク修理キットを別途購入したなどの理由で、標準のスペアタイヤが不要になった場合、それを売却することも可能です。特に、一度も地面に接地していない未使用のスペアタイヤであれば、一定の価格で買取を期待できます。

買取相場はタイヤのサイズや製造年、状態によって大きく変動しますが、一般的には3,000円から8,000円程度で取引されることが多いようです。売却先としては、中古タイヤ・ホイール専門店、大手カー用品店の買取サービス、またはネットオークションなどが考えられます。

売却前にタイヤの製造年をチェック！

タイヤの価値は、溝の深さだけでなく「新しさ」も重要です。タイヤの側面には「X2522」のような4桁の数字が刻印されており、これは製造年週を示します（この場合、2022年の第25週）。たとえ未使用でも、製造から5年以上経過しているとゴムが劣化していると見なされ、買取価格が大幅に下がったり、買取を断られたりすることがあります。

まとめ：クリッパーのスペアタイヤ知識

• クリッパーのスペアタイヤは主に荷室床下や車両後部下に格納
• グレードや年式によりスペアタイヤがなくパンク修理キットを装備
• スペアタイヤ非搭載の理由は燃費向上目的の軽量化が主
• 搭載されているスペアタイヤは速度制限のある応急用タイヤ
• 交換作業は安全で平坦な場所で行うのが絶対条件
• 高速道路での停車時は三角表示板の設置が法律で義務付けられている
• ジャッキアップの前に必ずホイールナットを少し緩めておく
• ジャッキアップポイントは取扱説明書で正確な位置を確認する
• ジャッキアップした車体の下には絶対に入らない
• ナットの締め付けは星を描くような対角線の順番で行う
• パンク修理キットは側面の傷や大きな裂け傷には使用不可
• 修理キット使用後のタイヤは交換になる可能性が高い
• 作業に少しでも不安があれば無理せずロードサービスを呼ぶ
• JAFや自動車保険のロードサービスは積極的に活用する
• 未使用のスペアタイヤは製造年が新しければ売却も可能