【車検に通る】日産クリッパーのタイヤサイズをインチアップする完全ガイド

日産クリッパーは、ビジネスシーンでのタフな活躍から、近年ではキャンプや車中泊といったレジャー用途まで、幅広い場面で愛される一台です。そのクリッパーの印象をガラリと変えるカスタムの第一歩が「インチアップ」です。

しかし、どのタイヤサイズを選べば良いのか、特に13インチや14インチ、あるいは15インチといった選択肢を前に、車検は大丈夫だろうか、乗り心地はどう変わるのか、といった疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。適切な知識がないまま進めてしまうと、見た目は良くても走行性能に悪影響が出たり、最悪の場合は保安基準に適合せず車検に通らなかったりする事態も起こり得ます。

この記事では、日産クリッパーのインチアップを成功させるための、正しい知識と具体的な手順を、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。

日産クリッパーのタイヤサイズをインチアップする前の知識

インチアップのメリットとデメリット

タイヤのインチアップは、愛車のドレスアップとして非常に効果的ですが、走行性能や維持費にも影響を及ぼします。メリットとデメリットの双方を深く理解した上で、ご自身のカーライフの目的に合った選択をすることが、満足度の高いカスタムへの第一歩です。

インチアップがもたらす主なメリット

インチアップの最大の魅力は、やはり視覚的な変化によるドレスアップ効果です。ホイール径が大きくなることで、タイヤの側面（サイドウォール）の厚みが減り、いわゆる「低扁平タイヤ」になります。これにより、足元が引き締まり、全体的に軽快でスポーティーな印象を演出できます。純正のスチールホイールから、デザイン性の高いアルミホイール（メッシュ、フィン、スポークなど）に交換すれば、その効果は絶大で、自分だけの個性的な一台に仕上げることが可能です。

走行性能の面では、サイドウォールの剛性が高まることで、コーナリング中にタイヤがよれる現象が抑制されます。結果として、ハンドル操作に対する車の応答性（ハンドリングレスポンス）が向上し、ステアリングフィールがダイレクトになります。これにより、カーブなどでの走行安定性が増し、よりキビキビとした走り心地を実感できるでしょう。

知っておくべきデメリットと注意点

一方で、デメリットも明確に存在します。最も多くの人が体感するのは乗り心地の悪化です。タイヤのクッション部分が薄くなるため、路面からの細かな振動や段差を乗り越えた際の衝撃が車内に伝わりやすくなります。特に、これまで純正タイヤのソフトな乗り心地に慣れていた方にとっては、ゴツゴツとした硬い乗り心地に感じられる可能性が高いです。

また、性能面では燃費の悪化が懸念されます。多くの場合、インチアップに伴いタイヤ幅が広くなり、グリップ性能の高いタイヤを選ぶ傾向があるため、路面との摩擦（転がり抵抗）が増加します。さらに、大径のホイールと幅広のタイヤは重量も増すため、「バネ下重量」が増加し、これも燃費やサスペンションの動きに影響を与えます。

バンとリオで異なる注意点とは？

日産クリッパーには、商用モデルの「NV100クリッパーバン」と、乗用モデルの「NV100クリッパーリオ」が存在します。この2モデルは外観が似ていますが、法律上の区分が異なるため、インチアップにおけるルール、特に車検に関する条件が全く異なります。この違いを理解しないままパーツを選ぶと、車検に通らないだけでなく、安全性能を損なう危険性もあります。

最大の違いは、装着が義務付けられているタイヤの種類です。4ナンバーの軽貨物車であるクリッパーバンは、重い荷物を積載することを前提に設計されているため、その荷重に耐えうるタイヤの装着が法規で定められています。

項目	NV100クリッパーバン (DR17V)	NV100クリッパーリオ (DR17W)
車両区分	軽貨物車（4ナンバー）	軽乗用車（5ナンバー）
必要なタイヤ規格	LT（ライトトラック）規格タイヤ またはそれに準ずる耐荷重性能を持つタイヤ	乗用車用タイヤ
タイヤ表記例	145/80R12 80/78N LT	165/60R14 75H
最重要注意点	デザイン優先で乗用車用タイヤを装着すると、耐荷重不足で車検不適合となる。	タイヤのはみ出しやスピードメーターの誤差など、一般的な保安基準への適合が求められる。

クリッパーバンの純正タイヤに表記されている「80/78N」は「荷重指数（ロードインデックス）」と速度記号を示し、このタイヤが規定の条件下で支えられる重さを示しています。インチアップする際も、この荷重指数を下回らない性能を持つLTタイヤを選ぶことが絶対条件となります。

クリッパーバンにお乗りの方へ。格好いい乗用車用タイヤを履きたい気持ちはよく分かりますが、安全とコンプライアンスが最優先です。LTタイヤの中にもデザイン性の高いものは存在しますので、必ず規格に合ったものから選んでくださいね。

車検に通るためのサイズの選び方

インチアップで最も重要なハードルが車検です。どんなに理想的なスタイリングを実現しても、国の定める保安基準を満たしていなければ公道を走行できません。ここでは、車検を問題なくクリアするための、技術的なポイントを解説します。

タイヤ外径とスピードメーターの誤差

インチアップの基本は、装着するタイヤの外径を、純正タイヤの外径と大きく変えないことです。タイヤの外径が変わると、タイヤ1回転で進む距離が変化し、スピードメーターの表示と実際の速度との間に誤差が生じるためです。

この誤差については、国土交通省が定める「道路運送車両の保安基準」で厳格な規定があり、スピードメーターの許容誤差は、平成19年1月1日以降に製造された車の場合、「メーターが40km/hの時点で、実速度が30.9km/hから42.55km/hの範囲内」にあること、とされています。これをタイヤ外径に換算すると複雑なため、一般的には純正タイヤの外径と比較して±3%以内に収めることが、車検をクリアするための安全な目安として広く認知されています。

フェンダーからのはみ出し（ハミタイ）

タイヤやホイールが車体（フェンダー）から突出する、通称「ハミタイ」は、原則として不正改造となり車検に通りません。これは、突出したタイヤが歩行者に接触したり、巻き上げた小石を他車にぶつけたりする危険を防ぐためです。

はみ出しは、タイヤの幅だけでなく、ホイールの「インセット（オフセット）」という数値が大きく影響します。インセット値が小さくなるほど、ホイールは車体の外側へ移動します。以前は非常に厳格でしたが、保安基準の改正により、タイヤの側面（サイドウォール）のラベルなどが僅かにはみ出すことは許容されるようになりました。しかし、これはあくまでタイヤ部分のみであり、ホイールやキャップがはみ出すことは認められていません。安全のためにも、クリッパーの場合はフェンダー内に完全に収まるサイズを選ぶのが賢明です。

車検をクリアするための2大原則

1. タイヤの外径は純正サイズとほぼ同じものを選ぶ（外径差±3%が目安）
2. タイヤとホイールがフェンダーから絶対にはみ出さないインセット値を選ぶ

基準となる純正タイヤサイズを確認

インチアップ計画を具体的に進めるには、まず「現在地」である純正サイズを正確に把握することが不可欠です。クリッパーバンとクリッパーリオでは、標準装着されているタイヤサイズとホイールサイズが異なります。

これらの公式なスペックは、日産の公式サイトで公開されているWEBカタログや主要装備一覧で、年式やグレードごとに確認することができます。

モデル	型式	純正タイヤサイズ	純正ホイールサイズ	純正指定空気圧の確認場所
NV100クリッパーバン	DR17V	145/80R12 80/78N LT	12 × 4.00B	運転席ドア開口部のラベルに記載
NV100クリッパーリオ	DR17W	165/60R14 75H	14 × 4.5J

ご自身の車の運転席ドアを開けたピラー部分に貼られているコーションラベル（タイヤ空気圧ラベル）には、その車両の標準タイヤサイズと指定空気圧が明記されています。取扱説明書と合わせて、必ず実車で確認する習慣をつけましょう。この純正サイズを基準点として、先述の外径ルールを守りながらインチアップ後のサイズを検討していくことになります。

ホイール選びで重要なPCDとインセット

インチアップの主役とも言えるホイール。デザインやカラーに目が行きがちですが、車両に安全かつ確実に取り付けるための「規格（スペック）」の理解が極めて重要です。

PCDと穴数

PCD（Pitch Circle Diameter）とは、ホイールを車体ハブに取り付けるためのボルト穴の中心を結んでできる円の直径をミリメートルで示した数値です。クリッパー（バン・リオ共通）の場合、PCDは100mmで、ボルト穴の数は4つ（4H）です。ホイールを選ぶ際は、この「PCD100/4H」という規格が大前提となります。これが異なると、物理的にホイールを取り付けること自体ができません。

インセット（オフセット）

インセットは、ホイールの取り付け面（ハブ面）が、ホイール全体の幅の中心線からどれだけ外側（プラス）または内側（マイナス）にずれているかを示す数値です。この数値が、フェンダーからのはみ出しや、車体内部への干渉に直結する最重要スペックです。

• インセット値が大きい（例：+50）：ホイール全体がより車体の内側に入り込む。
• インセット値が小さい（例：+40）：ホイール全体がより車体の外側に出っ張る。

クリッパーリオ（DR17W）の純正ホイールインセットは「+50mm」です。インチアップでより太いタイヤや幅広のホイールを装着する場合、このインセット値を適切に選ばないと、フェンダーに接触したり、内側のサスペンションアームに干渉したりします。一般的に、適合範囲は+45mmから+50mm程度が安全な目安とされています。

ハブ径も忘れずにチェック

もう一つ見落としがちなのが「ハブ径」です。これはホイール中央の穴の直径で、車体側のハブ（車軸中心の突起）にはめ込む部分です。日産純正ホイールはこのハブ径が車体側にぴったり合うように設計されており、車体重量の一部をハブで支え、ホイールセンターを正確に出す役割も担っています。

多くの社外ホイールは、様々な車種に対応できるようハブ径が大きめに作られているため、装着すると隙間ができます。この隙間を埋めるためのパーツが「ハブリング」です。高速走行時のハンドルのブレを防ぎ、ナットの緩みを予防するためにも、社外ホイールを装着する際は適合するハブリングを同時に装着することを強く推奨します。

日産クリッパーのタイヤサイズをインチアップする具体例

13インチへのインチアップと注意点

純正が12インチのクリッパーバンにとって、13インチへのインチアップは、最も控えめながらも確実な変化をもたらす選択肢です。乗り心地の悪化を最小限に抑えつつ、「いかにも商用車」という雰囲気を少しだけ払拭したい、というニーズに適しています。純正のスチールホイールから軽量なアルミホイールに交換するだけでも、バネ下重量の軽量化に繋がり、乗り心地や燃費に良い影響を与える可能性があります。

タイヤサイズの候補としては「155/70R13」や「165/65R13」が挙げられますが、何度も述べている通り、クリッパーバンで車検に対応させるには、LT規格の13インチタイヤを選ぶ必要があります。しかし、現在、13インチで選択できるLT規格タイヤは市場にほとんど存在せず、選択肢が極めて限られるのが最大の課題です。

数少ない選択肢の一つとして、ダンロップの「GRANTREK TG4 145R13 6PR LT」などが存在しますが、これは純正の145/80R12（外径約537mm）に対して外径が約572mmと、およそ6.5%も大きくなります。これはスピードメーターの誤差が車検の許容範囲を超える可能性が非常に高く、フェンダー内への干渉リスクも考慮する必要があるため、ポン付けでの装着は推奨できません。このように、クリッパーバンの13インチ化は、車検対応という面でハードルが高いのが実情です。

14インチの適合タイヤとホイール

14インチは、クリッパーバン・リオの双方にとって、見た目の変化、性能、コスト、そして車検対応のしやすさといった、あらゆる面でバランスの取れた最も人気の高いインチアップサイズです。タイヤの選択肢も格段に増え、カスタマイズの楽しさが一気に広がります。

クリッパーバン (DR17V) の場合

クリッパーバンを12インチから14インチへ2インチアップする場合、タイヤサイズは「165/55R14」が外径（約537mm）の変化がほとんどなく、最適な候補となります。このサイズを選ぶ上で最も重要なのは、LT規格であることです。

車検対応タイヤとして市場で高い人気を誇るのが、ヨコハマの「PARADA PA03 165/55R14C 95/93N」です。タイヤ側面に描かれたファイヤーパターンが特徴的で、働くクルマをお洒落にドレスアップしたいユーザーから絶大な支持を得ています。他にも、トーヨータイヤの「OPEN COUNTRY R/T」など、オフロードテイストを演出できるLT規格タイヤも選択肢に入ります。ホイールは、リム幅4.5J～5.0J、インセット+45前後の組み合わせが一般的です。

クリッパーリオ (DR17W) の場合

純正で14インチを装着しているクリッパーリオは、ホイールのデザインを変更するだけで、クルマのキャラクターを大きく変えることができます。純正と同じ「165/60R14」のタイヤを流用し、軽量なスポーツタイプのホイールや、華やかなデザインのホイールに交換するだけでも満足度は高いでしょう。

また、タイヤも交換する場合は、より静粛性を高めたコンフォートタイヤや、雨の日の安全性を高めたウェット性能重視のタイヤなど、ご自身の使い方に合わせてタイヤの特性を選べるのが乗用モデルならではのメリットです。

14インチはまさに「ゴールデンサイズ」と言えるでしょう。特にバンの方は、車検対応のLTタイヤが複数のメーカーから選べるこのサイズが、現実的なインチアップの第一候補になります。デザインと実用性を両立させたいなら、まずは14インチから検討するのがおすすめです。

15インチ装着時のクリアランスは

15インチへのインチアップは、クリッパーの足元に力強い存在感とスタイリッシュさをもたらす、よりアグレッシブなカスタムです。タイヤの扁平率がさらに低くなり、見た目のスポーティーさは格段に向上します。このサイズは、主にクリッパーリオが対象となります。

タイヤサイズは、純正の165/60R14（外径約553mm）との誤差が少ない「165/50R15」（外径約546mm）が定番の選択肢です。このサイズであれば、タイヤ外径の変化は約-1.3%に収まり、スピードメーターの誤差も全く問題ありません。

しかし、15インチを装着する際に最大の関門となるのがフェンダーやボディとのクリアランス（隙間）です。特に注意が必要なのは以下の点です。

ホイールサイズは、15インチのリム幅4.5J～5.0J、インセット+45～+48あたりが一般的ですが、同じ数値でもホイールのデザインやタイヤの銘柄（実際の幅は製品によって僅かに異なる）によって結果は変わります。干渉を避けるために、専門知識のあるショップで、現車を確認しながらのマッチング作業がほぼ必須となると考えてください。

15インチ化の注意点

クリッパーバンに15インチを装着し、かつ車検に対応させることは、適合するLT規格のタイヤが市場にほぼ存在しないため、極めて困難です。そのため、15インチ化はクリッパーリオ向けのカスタムと考えるのが一般的です。もしバンで挑戦する場合は、車検とは別の「イベント・展示用」と割り切る必要があるかもしれません。

インチアップによる乗り心地の変化

インチアップは、車の走行フィール、特に「乗り心地」に直接的な影響を及ぼします。この変化は、タイヤの構造と空気の量に起因するものです。

インチアップをすると、ホイール径が大きくなる分、タイヤの厚み（サイドウォールの高さ）が薄くなります。このゴム部分の厚みが、路面からの衝撃を吸収する天然のサスペンションの役割を果たしているため、薄くなればなるほど、その能力は低下します。結果として、路面の細かな凹凸やマンホールなどの段差を乗り越える際の突き上げ感が強くなり、乗り心地が「硬くなった」「ゴツゴツする」と感じることになります。

一方で、タイヤの剛性が高まり、たわみが少なくなることで、ハンドル操作に対する車の反応はよりダイレクトでシャープになります。カーブを曲がる際の車体の傾き（ロール）が減り、安定感が増したと感じることも多いでしょう。つまり、快適な乗り心地と、シャープなハンドリング性能は、ある種のトレードオフの関係にあるのです。

また、インチアップ後はタイヤ内部の空気の総量が減少するため、空気圧の管理がよりシビアになります。適正な空気圧を維持しないと、乗り心地がさらに悪化するだけでなく、タイヤの偏摩耗や燃費の悪化にも繋がります。月に一度はエアゲージで空気圧をチェックする習慣をつけましょう。

乗り心地の変化は、個人の感覚や、普段走行する道路の状況によっても感じ方が大きく異なります。見た目のカッコよさを最優先するのか、毎日の快適な移動を重視するのか。ご自身の価値観と向き合いながら、ベストなインチサイズを決めると、きっと後悔のないカスタムになりますよ。

日産クリッパーのタイヤサイズをインチアップする総括

• インチアップは外観をスタイリッシュにするが乗り心地は硬化する
• 燃費悪化やロードノイズ増加など維持面でのデメリットも存在する
• クリッパーバンは軽貨物車でありLT規格タイヤの装着が法規上の義務
• クリッパーリオは軽乗用車のため一般的な乗用車用タイヤが使用可能
• 車検ではタイヤやホイールがフェンダーからはみ出していないかが厳しくチェックされる
• タイヤ外径は純正サイズからプラスマイナス3%以内の変化に留めるのが安全
• クリッパーのホイール基本規格はPCD100mmの4穴（4H）
• 基準となる純正サイズはバンが145/80R12、リオが165/60R14
• ホイールのインセット値がはみ出しや車体内部への干渉を左右する最重要項目
• 社外ホイール装着時はハブ径を確認しハブリングの使用を強く推奨
• バンの13インチ化は車検対応のLTタイヤが非常に少ないため難易度が高い
• 14インチは見た目・性能・コストのバランスが良く最も人気のあるサイズ
• バンの14インチ化では165/55R14CなどのLT規格タイヤが定番
• 15インチ化は主にリオが対象で165/50R15が適合サイズ
• インチアップ後はタイヤの空気量が減るため月一回の空気圧チェックがより重要になる
• 最終的な判断に迷った際はタイヤ専門店やカー用品店などプロに相談するのが最も確実